この話の主人公。斎藤の弟子。斎藤のひねくれた性格の最大の犠牲者(爆)。
斎藤とのやり取りの基本的なイメージは、修業時代の剣心と比古のそれだったりします。同人誌なんかに載ってるやつから、やおい的な部分を抜いたものです。
設定上の基本的なコンセプトは、「命を捨てずに大切な存在を守れる女性」です。個人的に、男女同権主義者なので。かと言って女が女だけで戦っても意味が薄いんです。現実として、男を無視は出来ない。本当は女性であることを隠さずに男と対等にやらせたいんですが、当時の社会状況からして無理でしょう。
洋子の動かし方について、悩んだことは殆どないです。とにかく思いつくまま。結構作者の分身に近かったりして。掲示板常連のすぎむらさまも「動きがいい」と言ってますが、洋子は確かに書きやすいです。典型的なじゃじゃ馬娘、ですから。
彼女の過去に関する心理的な描写が少ないのが不満、と言うかたもいるでしょう。
実は斎藤たちは、できるだけ思い出させないようにしているんです。物理的にも心理的にも、封印させたままにしておく。だから結果として描写が少なくなります。
旗本の、しかも下手をすれば小大名より上の家格である高家の姫君が、いくら家督争いに巻き込まれた結果とは言え、売られて町の薬屋で働かされる。しかもそこでもまともに扱って貰えない。挙げ句半分捨てられるような形で、店の外に放り出される。それは本人にとっては重い心の傷で、かと言ってそれらを知らないことにしている以上、正面から向き合うことも彼らには出来ない。ただ、思い出さなければ傷が痛むことはない、んです。
言葉は悪いかも知れませんが、洋子と斎藤たちの関係から言えば、恩着せがましく振る舞って文句を言わせないようにすることだって出来るわけです。洋子は彼らに捨てられれば、他に行く場所はない。路頭に迷って落ちるところまで落ちるしかない。それを仄めかせば多分洋子は黙り込む。そんなことは分かっている。
だけどそれは卑怯だから、彼らはそんなことはしない。本人の責任ではないことで捨てられ、それだけで十分過ぎるほど傷ついていることを知りながら、その傷を利用するようなことはしない。思い出せば傷が痛むから、思い出させようともしない。
更に言うと、その事情が彼女に与える影響も関連しています。何しろ十歳の、両親を亡くしたばかりの娘に、家督相続争いに対処しろと言っても無理なわけで。捨てたのは従兄弟で、原因も従兄弟が一方的に悪い。だから彼女には、自分を売った世界への拒否感と要らない存在である自分への負の感情しか残っていません。
結局、斎藤が自分のことを嫌っていると思いこんでいるのも、根本的にこの付近の負の感情が関係しています。
描写が少ないのはそういうわけです(改めて書いてみて、斎藤たちが実は凄く大人であることに気づいた作者・・・(爆))。
ちなみに、複数の名前を持ってて相手によって呼び方が変わる、というのは私の小説の中では結構出てくるパターンで、名前によって立場が変わるのは当たり前です。中には呼び方に応じて本人の性格(というか言葉遣い)が変わる、ついでに地の文での名称も変わるというのまであります。