ぶっちゃけた話 4

 

 翁こと柏崎念至(と京都御庭番衆・闇乃武)

 何かと出てくるこの人たちですが、「京都初日」で浪士たちに絡まれているのを助けられた時点のお増は、洋子の正体を知りません。ただ、葵屋で紹介された時点の翁は、外見から少なくとも見当はついています。で、後で江戸から送られてきていた手紙で確認したというわけです。

 

 新撰組の監察組織は有名ですが、スパイ活動とか何とかやるのは実際には頭のいい連中(某国の諜報組織では「他の職業についても必ず成功するような、最も優秀な人間しか採らない」そうです)なので、基本的には剣客集団で、新規入隊者も恐らく剣を使っての任務と思っていた彼らが、そうそうにわか仕立てで出来るかなと疑問に思ったわけです。かと言って偽名を使うことも多かった浪士たち相手に、何の情報網もなしにあれだけの活躍が出来たとは思えない。

 だからバックアップとして京都御庭番衆を新撰組と組ませることにしたわけですが、本文に書いてある通りその付近の事情はかなり複雑です。

 洋子(彼らにとっては静)を巡る確執に、新撰組・見廻組の間の争い、更に闇乃武と御庭番衆の隠密間の争い。御庭番衆にしてみれば、洋子を勝手にさらって自分の組織に組み込んだ新撰組は、本来許せない存在です。けれども奪還しようとすれば新撰組と戦う羽目になるし、そうなれば勝敗はともかく間違いなく騒ぎになる。闇乃武のことを考えれば、それは得策ではない。

 もともと京都は闇乃武の地盤で、そこに御庭番衆が乗り込んできたという形に、この話ではなっています。従って闇乃武としては御庭番衆を追い出したいし、御庭番衆としては闇乃武を潰して組織丸ごとを乗っ取るか、せめて対抗できるだけの基盤を築きたい。下手に新撰組と争って騒動になれば、それを口実に闇乃武は追い出し工作にかかるはず。それを防ぐためには、新撰組の不正行為も見逃さざるを得ない。

 

 見廻組が当てにならなかったのも、一つの誤算です。御庭番衆の当初の目論見では、見廻組を新撰組と競わせて、両者への情報の流れを制御することで統制下に置くつもりでした。ところが見廻組は当てにならず、むしろ邪魔な組織に成り下がってしまう。闇乃武の残党と組む動きさえ一部では見受けられ、これでは御庭番衆も新撰組と組まざるを得ない。こうして他に選択肢のない状態で、洋子を仲立ちにした提携が成立するわけです。

 

 大体、京都に御庭番衆があって、それが他の組織と関係を持たないはずがないと思うんです。例えば闇乃武との関係一つ取っても色々空想できるし、新撰組・見廻組との関係にしても色々考えられる。第一、御庭番衆御頭(四乃森蒼紫)が新撰組幹部の顔を知らないはずがない、と。だからこの点に関しては、アニメの設定で行きます。

 

 小説を書く上では、使いやすい小道具的存在です。何と言っても情報を握っているし、「何でも屋」的な面があるので。特に翁は台詞もなかなかいいことを言えるので重宝してます。

 

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