ぶっちゃけた話 5

 「村正」について

 洋子の刀です、これ。

かなり当初から決めてました。彼女の刀を妖刀村正にしようってのは。「邂逅、そして」の最後で洋子が薬屋から刀を受け取るシーンがありますよね。あれ書いた時点でほぼ確定してました。

 

刀、或いは剣に関する私のイメージは、基本的にRPGです。要するに「剣と魔法の世界」の剣。だから剣が炎を出したり凍気を出したり、光ってたりするのはある意味で当たり前。呪われた剣とか、いわく付きの剣である特定の人しか持てないとかいうのも好きです。

るろ剣の場合、世界観そのものが違うので、この話ではそんな刀は出てきませんが、心に秘めている話の中にはそう言う世界の話もあります。

 

 で、そういう世界を描いたあるマンガの中に「ムラサメ」っていう刀が出てきて。それが「本当の力を出したとき、使用者の命を吸い取ってしまう」刀、一種の妖刀として描かれているんですが、マンガの中では二回も本当の力を出すのに死なない。むしろ所有者兼使用者に「二回目の時は、むしろ刀の方が俺に力を貸してくれたような・・・」と言わせる刀なんですね。

 更にそのマンガに関する「秘密本」の中で「妖刀」に関する話が少し出てきて、私はそれで「村正」の存在を知ったんです。所有者が狂ったとかの話も出てました。

 それによると、「徳川に害をなす刀」ってことで、何でも維新志士側が好んで持ってた刀らしいんですが、ここでは敢えて洋子に持たせることにしました。「幕府そのものはどうなってもいい」っていう、洋子の立場の象徴として。だから「彼女が売られる際に、従兄弟が持たせた刀」でないと行けないわけで。

 

・・・話が完全に別の方向に飛んでしまってるんで困りもの(というかこれを書くまで、そういう設定自体忘れてた・・・(核爆))なんですが、当初はもっと政治色の強い話を予定してまして。剣心と政治論を言い合いながら斬り結ぶ、とか。

 で、その時の「洋子の政治的な立場の象徴」としての村正という面があったんです。要するに「本質的に必ずしも佐幕ではない」立場だから「徳川家に害をなす」村正でも持てると。「自分を売った連中まで守りたくない」という、単純な理由ですが。

 

ただ、「なぜ妖刀と呼ばれるか」という部分について決めきれなかったので、「『秘密』」まで出さなかったんです。徳川家に害をなすってのは、結果論から見た偶然、とも言えるわけで、呪いだの所有者が狂っただのの伝説自体、オカルトがかってきてる。そういうのは個人的には結構好きですが、この話には(るろ剣、に関する話として)似つかわしくないだろうと。

で、最近読んだある小説で「本来の姿だと斬れすぎて、魔法で斬れ味を押さえている」剣って言うのが出てきて、そこからイメージを発展させて「斬ってる感覚もなくなるほど斬れる」刀ということにしたんです。所有者が狂うのは、「斬った感覚を求める」ためだと。

 ただし、洋子は狂わない予定です。理由は本文中に書いてあることから推測できると思います。更に一つ言わせてもらうとすれば、冒頭で出した「ムラサメ」の話&今まで読んだRPG・小説(「燃えよ剣」の土方と兼定の話も含めて)の設定も影響してます。刀、或いは剣ってのは(剣に限らずかも知れないけど)、それ自体が意志を持ってて、所有者を選ぶんじゃないかと。持ち主が気に入らなければ狂わせてでも別の所有者に移ろうとする。でも気に入れば、剣が持ち主を助けてくれることもあるんじゃないかと。要するに洋子は村正という刀に気に入られているわけです、はい。特に三番隊編入以降において。

 ただ、新撰組としては当然ながら都合が悪い。だから斎藤も教えるか否かで悩むんです。ちなみに斎藤しかこのことは知りません。上層部に教えれば取り上げられかねませんから。刀との相性はいいのだから、敢えて換えさせるまでもないだろうと。

 

 何で洋子に村正かというもう一つの理由は、「影のある刀」だからです。

村正は公的には禁じられていて、銘が潰されたやつが出回っているそうで。

この「銘が潰されている」ってのが洋子の「過去を隠している」という設定にぴったりじゃないかなと思ったんです。感覚的にフィットする、というか。他の設定と同様、明確に意識してたわけじゃないんですが。

 

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