作者よりのはしがき

 

 まあ、色々ありまして。インターネットに自分のホームページを作って小説載せようと思ったのはいいが、いきなりオリジナル載せても誰も読まないだろうということで、るろ剣の小説版同人誌(ただしやおいなし)だったら読んでくれる物好きな人もいるかなあと思って、こうしました。
 着想の原点は、るろ剣単行本十六巻。宗次郎と剣心の戦いが終わった後で、倒れている蒼紫と斎藤が再会するシーンがありますね。
 そのとき斎藤が「御庭番衆の情報収集力もなかなかのものだが、この国の情報収集ならこの国の国家機構が一番優れている。俺が警視庁の密偵をやっている理由の一つさ」と言います。これを読んで、あれっと思ったんですよ。「何で斎藤が日本の情報なんて集める必要があるのか」と。
 己の正義である『悪・即・斬』を貫くことと日本の情報を集めることとの接点が見いだせない。全国各地の悪人を斬るなんて事実上不可能だし、そういうスーパーマン的な趣味が斎藤にあるとも思えない。 
 で、結論としては斎藤には探したいものがあるんだろうと。それがどこにあるか(あるいはいるか)わからないので、警視庁の密偵になって日本の情報を集める中で探しているんだろうということになりました。 
 ところで、斎藤の今の奥さんの時尾は、会津藩の家老の娘です。幕末の京都はかなり危険なので、おそらく京都には彼女はいなかったでしょう。そして維新後に結婚したということは、新撰組時代の斎藤のことを直接は知らない可能性が高いです。

 それでふと思ったんです。「京都時代の斎藤を直接知ってる女性がいたらおもしろいんじゃないのかな」と。つまり、時尾の知らない斎藤を知っている女性。それも斎藤にとって京都時代というのは非常に重い意味を持っているでしょうから、それを知っている女性というのは時尾としてもある程度認めざるを得ない。
 あと、設定としてこだわったのは「剣心より若い子」ということです。剣心の思いをある程度理解できる子、言い換えれば大人たちの唱える「悪・即・斬」に必ずしもこだわらない子。そういう子は、大人でない方が良いと思ったんです。
 それで、幕末の京都という緊迫した状況下、しかも人斬りと新撰組隊士という対立関係にある二人が、若い世代なりにそれぞれ大人の大義名分に反発する姿を、共通項として描ければ良いなあと思っています。
 で、斎藤が探してるのは彼女だという設定で話を始めます。と言っても、書くのは主に幕末時代。新撰組版の男装の麗人の話です(当然、剣心や蒼紫も出てくる)。メロドラマにするつもりは少しもありませんから、そのつもりで。

 

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