番外編・特別インタビュー! 1

 そうむらさき(以下そ):先日行いました人気投票での皆さんのコメントを基に、メインキャラにインタビューすることにしました。本当は洋子さんにやって欲しかったんですが、斎藤さんが相手に含まれると知った途端、「叩かれるから嫌だ」と言って逃げ出し、現在行方不明です。締め切りが迫っているので私が代行します。

斎藤(以下斎):あの阿呆は、そんなこと言ってやがるのか。

そ:げ、斎藤さん!? インタビュー、二番目じゃありませんでした?

斎:一番目の洋子がいないんで、自動的に繰り上げだ。仕方なかろう。

そ:──(日程を確認する)そうでした……。では改めて、インタビュー、日本語でいうと質問会を始めます。まず最初に、洋子さんが三番隊に入ったときの状況についてですが──。

斎:あれは副長が言いだしたんだ。俺が希望したんじゃない。

そ:(うわ、にべもない答え…)それはそうでしょうけど、その前後の斎藤さんがちょっと優しいと言うので評判ですよ。

斎:優しい? 俺が?

そ:ほら、すんなり彼女を三番隊に引き受けたり、剣心との勝負の時に割り込んで庇ったりしたじゃないですか。その付近のことだと思いますよ。

斎:──あれは仕方なくやったんだ。あいつがあれ以上変になったら困るからな。

そ:というと?

斎:俺が見た限りだとそうでもないんだが、巡察中なんざに井上さんを無視して、かなり問題行動をやってたらしい。抜刀斎には勝てるはずもないし、いささか無茶が目に付くようになったんで身の程を教えてやろうと。

そ:身の程、ですか。

斎:ああ。大体、狂うにも格がある。あいつ程度だとせいぜいバカなちんぴらが自惚れて人殺しを楽しんでるくらいにしかなれんさ。そういう狂い方をされても困る。

そ:(──実は凄くけなされてるんではなかろうか?)分かりました。それと、洋子さんを新撰組にさらった時の状況を教えて欲しいんですが……。

斎:ああ、あの時か。何でも御庭番衆の京都探索方の根拠に、あの阿呆がのうのうと居座ってることが分かってな。沖田君が心配して俺に協力を頼んで来るから、手伝うことにしたんだ。

そ:協力する気になった理由は?

斎:あいつは俺の弟子だし、俺は人の倍くらいは手間暇かけてあいつに剣を教えてきたんだ。ここまで育ったのに、今更手放して御庭番衆や浪士どもにくれてやるのは惜しい。

そ:斎藤さんでも、そう思うんですか?

斎:その時で、既に二年以上の付き合いだからな。自己満足と言われようがあいつを他人にやる気はない。──大体苦労したんだぞ、その後芹沢に見つからないように。結局芹沢派の誰にも紹介しなかったし。あの人は妙に鋭かったから。

そ:具体的に、どうしたんですか?

斎:前川屋敷に放り込んで、外出禁止令を出したんだが、あの阿呆は俺たちが忙しいのをいいことにちっとも守ろうとせん。仕方ないから屯所常駐で見習い隊士どもの世話役をやらせて、どうにか外出はなくなった。それで終わったと思ったのもつかの間、世話役なんだから事務監督だけやってればいいものを、あの阿呆は稽古までつけようとする。芹沢が亡くなるまで毎日冷や冷やものだったんだぞ、こっちは。

そ:そういう事情だったんですか、洋子さんの世話役就任は。

斎:まあな。そもそもはそう言うことだ。

そ:大変でしたねえ。

斎:それをあいつは分かってないで、言いたい放題言いやがって。だから阿呆呼ばわりされるんだ。大体試衛館での時だって、俺なりに気を使ってやってたんだぞ。

そ:と言うと、具体的には?

斎:そもそも普通の師弟関係で、ああまで言われて破門しないこと自体が気を使ってやってる証明だ。普通ならとっくに破門されてる。

そ:連れてきたのが沖田さんだから、追い出せないだけじゃないんですか?

斎:──まあ否定はせんがな。それに、あいつは試衛館に正式にいることになった後も、妙に大人しかったんだ。食事も少ししか取らんし、喋らんし、無表情すぎるほど無表情だったし。後でキレて面倒な事態になるのもごめんだから、雪の日の一件の前から少し挑発はしてたんだが。──しかし、ああまで性格が激変するとはな。

そ:予想外だったんですか?

斎:完全に当てが外れた。よく考えればあの阿呆、仮にもお姫様だったんだ。それまでやってたこと自体で、十分キレる土台は出来てたってわけさ。少し開放的になるどころの騒ぎじゃない。完全なるじゃじゃ馬化だ。

そ:ホントはどうするつもりだったんですか? 洋子さんを挑発して。

斎:基本的には素直で、時々聞こえるか聞こえないか程度の不満は言う弟子にするつもりだったんだが。それをあの阿呆が完全にキレて、以来毎日大喧嘩だ。おまけに妙な思いこみまでしてやがるみたいだし。

そ:妙な思いこみ、というと?

斎:俺があいつを嫌ってるって言う、例のアレだ。──ったく、誰が嫌いな人間に一日中ついて剣を教えてやるか。俺がそういう物好きで従順な人間かどうかくらい、分かるだろうが。俺があいつの言うことを聞かないのは、単に師匠としての矜持がゆるさんだけであって、文句言わせてやってる時点で俺はあいつの存在を認めてる。薬屋じゃないんだ、俺は。

そ:それに関連して、何で洋子さんが気を使って大人しくしてるのを挑発してるんですか?

斎:あいつが、素直に俺の言うことを聞いてる光景を見たいか?

そ:(真剣に考える)──うーん。見てみたいような、見てみたくないような・・・。

斎:俺としては絶対に御免だ。考えただけで吐き気がする。大体あいつが大人しかったのは、試衛館に来た当初だけだぞ。俺にとってはぎゃーぎゃーうるさい方が自然なんだ。それに、大人しいのを放っておいて味しめられても困る。

そ:どういう意味ですか、それは?

斎:大人しくしてれば叩かないと思われたら、そのうち何も言わなくなる可能性がある。言わなくても不満はあるから、いつそれで暴走されるか分かったもんじゃない。暴走されるくらいなら、日常の騒音は我慢するさ。

そ:意外と苦労性なんですね、斎藤さんって。

斎:あの阿呆が分かってないだけでな。

そ:──まあそれはそうでしょうけど、これからどうするんですか、洋子さんとの関係。彼女の過去についてのことも含めて。

斎:取りあえずこのまま行くさ。あの阿呆がもう少しガキから卒業してくれれば、こっちだってやりようがあるんだがな。俺が稽古に参加しないことでごねてるようじゃまだまだだ。

そ:洋子さんの過去についても、ですか?

斎:──ああ。仮にあいつがどこぞのお偉方と結婚するようなことになれば、教えるかもしれんがな。新撰組の隊士やってるうちは、教えないだろう。その付近は俺の一存で決められることでもない。沖田君や局長、副長の意見もあるだろうし。

そ:分かりました。さて──

斎:俺は忙しいんでな、これで失礼するぞ。

そ:え、もういなくなるんですか?

斎:今まで貴様の下らん質問に付き合った分だけ、感謝しろ。またな。

(斎藤、その部屋から出ていく)

そ:あーあ、これだけしかインタビューできなかった。どうしよう・・・。

 

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